1. アレルゲンとアレルギー
1-1. アレルゲンとアレルギーの違い
・アレルゲンとは・・・アレルギー症状を引き起こす原因となる物質(抗原)のことです。
・アレルギーとは・・・食品を摂取した際に人によって食物に含まれる特定のアレルゲンが、体内で異物と認識されて排除する為の機能が働くことにより過敏な反応状態を起こしその結果好ましくない症状に至る状態のことです。
つまり、アレルゲンはアレルギーの原因物質のことを、アレルギーは症状のことを指します。
1-2. アレルギー表示の重要性について
アレルギー症状には「かゆみ、じんましん、唇やまぶたの腫れ、嘔吐、喘息」等がありますが、血液低下、呼吸困難、意識障害等の重篤な症状であるアナフィラキシーショックを引き起こす場合もあります。食物アレルギー患者にとって、アレルギー表示は生命を守る為に大切な情報であり、自分の食するものの中に、自分が反応するアレルゲンを含むのかどうかを判断し、選別できるように情報提供が行われていることが重要です。食品表示法第6条第8項にあるように、食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として厳しい罰則(回収・業務停止)などが課せられる場合もあります。
1-3. アレルギー28品目
食物アレルギー症状を引き起こすことが明らかになった物質は、表示義務のある「特定原材料」8品目と、表示が推奨されている「特定原材料に準ずるもの」20品目に分けられます。
・特定原材料(義務表示)・・・えび、かに、小麦、たまご、そば、乳、落花生(ピーナッツ)、くるみ
・特定原材料に準ずるもの(表示推奨)・・・あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、豚肉、バナナ、鶏肉、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、アーモンド、マカダミアナッツ
1-4. 2025年4月から「くるみ」の表示が義務化します。
「くるみ」が「特定原材料(義務表示)」に変更となり、猶予期間は2025年3月31日迄です。
症状としては、おう吐や下痢、じんま疹、咳など、一般的な食物アレルギーと同じものから、意識低下や血圧低下などで救急搬送が必要になる重篤な症状(アナフィラキシーショック)になったケースもあります。
義務化に至る背景の一つとして、「くるみ」が原因のアレルギー症例が9年間で10倍以上に増加したことが消費者庁より明らかになりました。さらに、2018年度と2021年度のアレルギー症例の多い順位は、卵、牛乳、小麦に次ぎ、くるみは4番目となりました。
こうした事から義務化に至ったということです。
2. アレルゲンの表示方法
2-1. 個別表示と一括表示
アレルゲン表示の方法は「個別表示」と「一括表示」の2パターンがあります。
基本的には、アレルゲンを含むそれぞれの原材料の直後に「(○○を含む)」、添加物の直後に「(△△由来)」と表示する「個別表示」が原則です。ただし、表示欄が小さい、なじまない等の理由がある場合は、原材料名欄の最後にまとめて「(一部に○○・△△を含む)」と、含まれているアレルゲンのすべてを表示する「一括表示」の方法も可能です。
【個別表示が難しい場合や個別表示がなじまない場合などの例】
- ・個別表示よりも一括表示の方が文字数を減らせる場合であって、表示面積に限りがあり、一括表示でないと表示が困難な場合
- ・食品の複合原材料に使用されている添加物に特定原材料などが含まれているが、最終食品においてはキャリーオーバーに該当し、当該添加物が表示されない場合
- ・同一の容器包装内に容器包装されていない食品を複数詰め合わせる場合であって、容器包装内で特定原材料などが含まれる食品と含まれていない食品が接触する可能性が高い場合
- ・弁当など裏面に表示がしてあると、表示を確認するのが困難であるとの食物アレルギー患者からの意見を踏まえ、裏面に表示がある為に表示を確認することが困難な食品について、ラベルを小さくして表面に表示するため表示量を減らしたい場合
2-2. 表示の省略について
個別表示において、2種類以上の原材料又は添加物に同一の特定原材料が含まれている場合は、繰り返しになるアレルギー表示は省略することができます。
2-3. 表示例
- ・個別表示・・・原材料の場合「食品名(○○・□□を含む)」⇒例:しょうゆ(大豆・小麦を含む)
添加物の場合「物質名(△△由来)⇒例:レシチン(卵由来)、カゼイン(乳由来)
※特定原材料の「乳」については、食品の場合は「乳成分を含む」と、添加物の場合は「乳由来」と表示します。 - ・一括表示・・・原材料名の欄に「○○○(△△△△、ごま油)、ゴマ、□□、×××、しょうゆ、マヨネーズ、たん白加水分解物、卵黄、食塩、酵母エキス/調味料(アミノ酸等)、増粘剤(キサンタンガム)、甘味料(ステビア)、☆☆☆☆、(一部に小麦・卵・乳成分・ごま・大豆を含む)」
※特定原材料などを2つ以上含んでいる場合には、「・」(ナカグロ)でつなぎます。
2-4. アレルギー表示の対象ではないもの
- ・店舗で作った弁当や惣菜、パン、菓子などのように、容器包装に入れずに販売する食品(ばら売りや量り売りなど)
- ・店舗で飲食させる食品(飲食店で提供される食品)、出前
※飲食店で容器包装に入れられた食品を販売する場合は表示が必要! - ・酒類(食品製造時に使用されるアルコールも含む)
3. 代替表記と拡大表記
3-1. 代替表記とは
代替表記とは、特定原材料等と表示方法は異なる(単にひらがな、カタカナ、漢字等に変えたもの等)が、特定原材料等と同じものであることが理解できる表記のことです。代替表記で表現ができる言葉は、「特定原材料等の代替表記等方法リスト」として、特定原材料7品目及び特定原材料に準ずるもの21品目についてリスト化され(図表1、図表2参照)、それ以外の表現は代替表記としては認められていません。
3-2. 拡大表記とは
拡大表記とは、特定原材料等の名称やその代替表記を含むことにより、特定原材料などを使った食品であることが理解できる表記のことです。(図表1、図表2参照)
【図表1】特定原材料の代替表記・拡大表記(表記例)
特定原材料(食品表示基準で定められた品目) | 代替表記 | 拡大表記(表記例) |
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表記方法や言葉が違うが、特定の原材料と同一であるということが理解できる表記 | 特定原材料名又は代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品であると理解できる表記例 |
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えび | 海老、エビ | えび天ぷら、サクラエビ |
かに | 蟹、カニ | 上海がに、マツバガニ、カニシューマイ |
小麦 | こむぎ、コムギ | 小麦粉、こむぎ胚芽 |
そば | ソバ | そばがき、そば粉 |
卵 *1 | 玉子、たまご、タマゴ、エッグ、鶏卵、あひる卵、うずら卵 | 厚焼玉子、ハムエッグ |
乳 | ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム | アイスミルク、ガーリックバター、プロセスチーズ、乳糖、乳たんぱく、生乳、牛乳、濃縮乳、加糖れん乳、調整粉乳 |
落花生 *2 | ピーナッツ | ピーナッツバター、ピーナッツクリーム |
*1 「卵」について、「卵白」及び「卵黄」については、特定原材料名(卵)を含んでいるが、事故防止の観点から、拡大表記として含む旨の表示を省略することは不可とする。
*2 落花生(ピーナッツ)の表記も可能。
【図表2】特定原材料に準ずるものの代替表記・拡大表記(表記例)
特定原材料に準ずるもの(通知で定められた品目) | 代替表記 | 拡大表記(表記例) |
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表記方法や言葉が違うが、特定の原材料に準ずるものと同一であるということが理解できる表記 | 特定原材料に準ずるものの名称又は代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品であると理解できる表記例 |
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アーモンド | | アーモンドオイル |
あわび | アワビ | 煮あわび |
いか | イカ | いかフライ、イカ墨 |
いくら | イクラ、スジコ、すじこ | いくら醤油漬け、塩すじこ |
オレンジ | | オレンジソース、オレンジジュース |
カシューナッツ | | |
キウイフルーツ | キウイ、キーウィー、キウィー、キーウィ、キウィ | キウイジャム、キーウィージャム、キウイソース、キーウィーソース |
牛肉 | 牛、ビーフ、ぎゅうにく、ぎゅう肉、牛にく | 牛すじ、牛脂、ビーフコロッケ |
くるみ | クルミ | くるみパン、くるみケーキ |
ごま | ゴマ、胡麻 | ごま油、練りごま、すりゴマ、切り胡麻、ゴマペースト |
さけ | 鮭、サーモン、サケ、しゃけ、シャケ | 鮭フレーク、スモークサーモン、紅しゃけ、焼鮭 |
さば | 鯖、サバ | さば節、さば寿司 |
大豆 | だいず、ダイズ | 大豆煮、大豆たんぱく、大豆油、脱脂大豆 |
鶏肉 | とりにく、とり肉、鳥肉、鶏、鳥、とり、チキン | 焼き鳥、ローストチキン、鶏レバー、チキンブイヨン、チキンスープ、鶏ガラスープ |
バナナ | ばなな | バナナジュース |
豚肉 | ぶたにく、豚にく、ぶた肉、豚、ポーク | ポークウインナー、豚生姜焼、豚ミンチ |
まつたけ | 松茸、マツタケ | 焼きまつたけ、まつたけ土瓶蒸し |
もも | モモ、桃、ピーチ | もも果汁、黄桃、白桃、ピーチペースト |
やまいも | 山芋、ヤマイモ、山いも | 千切りやまいも |
りんご | リンゴ、アップル | アップルパイ、リンゴ酢、焼きりんご、りんご飴 |
ゼラチン *3 | | 板ゼラチン、粉ゼラチン |
*3 ゼラチンは牛や豚を原材料として製造されるが、アレルギー表示としては「ゼラチン」のみ表示すればよい。
4. アレルゲン表示に関するお役立ち情報
4-1. アレルゲン表示に便利な画像素材をダウンロードいただけます
食品のパッケージでのアレルギー表示では、「イラスト付きでの表示」をおすすめします。
弊社では、無料で使用できる素材をご用意しました。
ユニバーサルデザインを意識し、老若男女、さらには国籍の異なる方が見てもわかりやすいイラストを意識し作成いたしましたので、ぜひアレルギー表示の作成にご活用ください。
ダウンロードフォーム
下記のフォームに入力の上、送信ボタンを押してください。
メールでダウンロードのための URL をお送り致します。入力された情報に間違いがないことをご確認ください。
4-2. 義務表示8品目の覚え方
義務表示についての特定原材料は そば・小麦・かに・落花生(ピーナッツ)・乳・えび・たまご・くるみとなります。
そ そば
こ こむぎ
か かに
ら らっかせい
み みるく
え えび
た たまご
く くるみ
「そこからみえたくるみ」の語呂合わせで覚えやすいと思います。
他には、
え えび
ら らっかせい
こ こむぎ
く くるみ
か かに
た たまご
み みるく
そ そば
「えらこくかたみそ」 全然使ってなくてカピカピになった固い味噌をイメージして覚えると
すんなり入ってくるかもしれません。