「ポジティブリスト制度」とは、食品用器具や容器包装に使用できる(食品に直接触れても安全性が担保されている)化学物質をあらかじめリスト化、そのリスト内の化学物質のみ器具・容器包装に使用が可能になるという制度です。
2020年に施行された改正食品衛生法において、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度が導入されました。この制度の目的は、食品と接触する器具や容器・包装資材に含まれる化学物質が食品に移行し、消費者の健康に悪影響を与えるリスクを最小限に抑えることです。また、使用できる化学物質がリスト化されることにより、確認が容易になる、というメリットもあります。
「ポジティブリスト制度」は、2020年6月1日に施行され経過措置期間5年間により、2025年5月31日までは旧ネガティブリストの併用が許されておりましたが、2025年6月1日より完全実施されることになります。6月1日以降は、リストに掲載されていない化学物質の使用は禁止され、安全性が確認された物質のみを使用することが義務付けられますので、注意が必要です。
従来、我が国では真逆の「ネガティブリスト」(食品用器具や容器包装の材料に使用される化学物質のうち、安全性への懸念が疑われる物質を制限する方法)をとっておりました。近年、技術の進歩などによる新しい化学物質が登場し、
①ネガティブリストでは、新しい化学物質全体がカバーできないこと
②新しい化学物質の安全確認までに時間を要すること
③新しい化学物質(ネガティブリストに未掲載)を使用し、食品へのリスクが高まったこと
などの懸念から、「ポジティブリスト制度」への移行が決まったものです。
また近年、我が国は食品の輸出に力をいれています。その主な相手国であるEU・アメリカ・オーストラリア・中国などは、すでにポジティブリスト制度を導入していることから、国際基準に足並みを揃える、という背景もあります。輸出時に必要な書類にも添付されることがあることから、ダブルスタンダード解消の目的でもあると考えられます。
日本国内でも、食品に対する安全性への関心は高まっていることから、ポジティブリスト制度の導入により安全性の確保ができるようになる、と考えられます。
ポジティブリスト制度の対象品目としては、基ポリマー(プラスチック)だけでもゆうに1,000品目を超えており、コーティング・微量モノマーを含めると2,000品目以上になります。
▶︎対象品目リスト
代表的なものとして、包装資材で使用頻度の高い
①熱可塑性プラスチック:ポリエチレン・ポリスチレン
②熱硬化性プラスチック:メラミン樹脂・フェノール樹脂
③熱可塑性エラストマー:ポリスチレンエラストマー・スチレン
などが列挙されています(食品衛生法施行令で「合成樹脂」と定められているもの)
熱硬化性エラストマーのゴム、帯電防止剤や防曇材のような表面に塗布する塗布材に関しては、ポジティブリスト制度の対象外となっています。
※ポジティブリストQ&Aでは、なお、ポジティブリストの対象外の物質は、ポジティブリストへの収載がなくても引き続き使用可能ですが、事業者においては食品衛生法に基づき従前の管理を遵守し、自らの責任において安全性の確保を行う必要がありますと記載されています。
今回のポジティブリスト制度では、食品に直接触れるものが対象になっています。
また、食品製造時に原材料に対して直接触れているものは対象になります。ここで注意しなければいけないのは、容器等で異なる物質が層になっている場合です。基本、直接触れるものが対象になりますが、触れていない場合でも、人の健康を損なうおそれのある量を超えて溶出、または浸出し、食品に触れる可能性がある場合はポジティブリスト制度の対象になりますので、確認が必要です。
現在使用している食品用器具や容器包装に関し、ポジティブリスト証明書を用意しておく必要があります。
実施時期が迫るにつれ、今後量販店や輸出業者からの提出依頼も想定されますので、対象品目のリストアップも併せて早めに準備をおすすめします。
また、ポジティブリスト対応の食品用シール・ラベルの選び方と注意点はこちらよりご確認ください。
▶︎ポジティブリスト対応の食品用シール・ラベルの選び方と注意点