熊本県産として販売されていたアサリの産地偽装問題を受けて、食品表示法で運用されている「長いところルール」の見直しを求める声が上がっています。アサリの産地偽装問題で注目されている「長いところルール」とは、どのようなルールなのでしょうか。
「長いところルール」とは、畜産物や水産物などで生育地が複数の場合に、飼育や養殖の期間が最も長い地域や国を「原産地」として表示するルールのこと。例えば中国で採取したアサリを生きたまま日本に輸入し、日本の浜で育てた後に出荷する場合、生育期間全体のうち、中国で生育した期間の方が長ければ原産地は「中国」、逆に日本での生育期間の方が長ければ原産地は「日本(又は都道府県等)」と表示できます。
一般的に水産物は、特定の領海内や排他的経済水域内で当該国の漁船が漁獲した場合は、その国が「原産地」となるが、公海上で漁獲した場合は漁船の船籍国が「原産地」となります。アサリ以外で「長いところルール」が適用されている代表的なものは、牛肉、豚肉、鶏肉など。海外で生まれた子牛を輸入して日本で育てた場合、育った期間が長い国を原産地と表示でき、日本での期間が長ければ「国産牛」と表示することができます。
ただ、牛や豚などは見た目で生育状況が想定できるが、アサリの場合は、見た目ではほぼ分からないことが、今回の産地偽装につながった原因の一つと言われています。
なお、「長いところルール」は農産物には適用されません。基本的に収穫した地域が原産地とされます。ただし、中国からの輸入が急増している菌床シイタケでは、長い期間を中国で栽培されたにもかかわらず、日本で収穫することで「国産」と表示できることが問題視され、農林水産省では、シイタケについても「長いところルール」を採用するよう消費者庁に要請する方針を示しています。
今回、産地偽装の舞台となった熊本県では問題発覚後、2か月間の出荷停止の措置を講じており、新たな産地表示ルールも検討していましたが、この度、熊本県は県産天然アサリの流通経路をQRコードで可視化する独自のトレーサビリティー制度を構築することを公表しました。他の産地のアサリが途中で混入しないよう封印した状態で流通させ、消費者が産地証明書を見て安心して購入できる仕組みとするようです。また、政府も今後は「蓄養」を「長いところルール」から外し、蓄養では国産と表示できないようにする方向で検討しています。
産地偽装問題を受けて、適用する農産物・水産物を含めた原産地表示の見直しや、地域ごとに産地偽装を防ぐ新たなルールが、さらに求められそうです。