EUへの食品輸入におけるラベル表示は、「消費者への食品情報提供に関する規制」欧州議会・理事会規則(EU)No.1169/2011が施行され、EU市場で流通し消費者に販売される時点から輸入者もしくは販売者の義務が発生します。
【EUラベル必要項目について】
規則(EU)No.1169/2011で定められている、表示義務のある一般的な項目
- 食品名
- 成分リスト
- アレルギー誘発物質
- 特定成分の分量や成分の区分
- 食品の正味量
- 賞味あるいは消費期限
- 特別な保管条件や使用条件(特にある場合)
- 一部食品の原産国表示
- 使用法(説明が必要な場合)
- 使用方法(記載がないと適切に使用できない場合)
- 実際のアルコール度数(度数が1.2%を超える飲料の場合)
- 栄養表示
上記1項目が規則(EU)No.1169/2011で定められている、表示義務のある一般的な項目です。
また、特定のタイプ/カテゴリーの食品に対して、追加の必須項目と表示方法が付則されています。
追加的な表示義務がある食品(第10条・付則III)下記6項目
■ 特定タイプ/カテゴリーの食品
- ガス充填包装された食品
- 甘味料を含む食品
- グリチルリチン酸(またはそのアンモニウム塩)を含む食品
- 高カフェイン含有飲料またはカフェイン添加食品
- フィトステロール類、フィトステロールエステル類、フィトスタノール類、フィトスタノールエステル類を加えた食品および食品成分
- 冷凍肉、冷凍肉調整品、冷凍未加工水産物
EUと日本のアレルギーの表示は大きく分けて2点の違いがあります。
1. 対象品目
【日本】
義務表示(特定原材料7品目)と推奨表示(特定原材料に準ずるもの20品目)に分けられています。
【EU】
義務表示のみで、推奨表示はありません。
義務表示の対象(14品目)
- グルテンを含むシリアル類(小麦、ライ、大麦、オートムギ、スペルト、カムートあるいはそのハイブリッド型、およびそれら製品)、ただし以下を除く。
- デキストロースを含む小麦を原料とするグルコースシロップ(※)
- 小麦を原料とするモルトデキストリン(※)
- 大麦を原料とするグルコースシロップ
- 農産品由来のエチルアルコールを含むアルコールを含んだ蒸留液の製造に使用されるシリアル類
- 甲殻類およびその製品
- 卵およびその製品
- 魚およびその製品、ただし以下を除く。
- ビタミンまたはカロチノイドの調製品のキャリアや香味料として使用される魚ゼラチン
- ビール、サイダー、ワインの清澄剤として使用される魚ゼラチンまたはアイシングラス
- ピーナツおよびその製品
- 大豆およびその製品、ただし以下を除く。
- 完全に精製された大豆油脂(※)
- 自然混合されたトコフェロール(E306)、天然Dアルファ・トコフェロール、天然Dアルファ・トコフェロールアセテート、大豆を原料とする天然Dアルファ・コハク酸トコフェロール
- 植物油製ファイトステロール、大豆を原料とするファイトステロール・エステル
- 大豆を原料とする植物油ステロールから製造される植物スタノールエステル
- 乳およびその製品(ラクトース含む)、ただし以下を除く。
- 農産品由来のエチルアルコールを含むアルコールを含んだ蒸留液の製造に使用される乳しょう
- ラクチトール
- ナッツ類(アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、カシューナッツ、ピーカン、ブラジルナッツ、ピスタチオ、マカダミアナッツ、クイーンズランドナッツ)およびその製品、ただし以下を除く。
- 農産品由来のエチルアルコールを含むアルコールを含んだ蒸留液の製造に使用されるナッツ類
- セロリおよびその製品
- マスタードおよびその製品
- ゴマおよびその製品
- 二酸化硫黄および亜硫酸塩(食べられる状態で供された、もしくは製造者の指示に基づいて調理された状態の製品について、SO2濃度10mg/kgまたは10mg/l超の場合)
- ルーピンおよびその製品
- 軟体動物およびその製品
※およびこれらを使用した製品日本では表示をしていれば目立たせて表示をさせる義務はありませんが、EUでは、他の成分と明確に見分けがつくようにフォントやスタイル、背景色などで強調表示をする必要があります。
EUと日本のアレルギーの表示は大きく分けて2点の違いがあります。
1. 義務表示項目
【日本】
下記5項目が義務表示です。
- 熱量
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物
- 食塩相当量
【EU】
下記7項目が義務表示です。
日本の項目に加えて、飽和脂肪酸、糖類が必須となっています。
- エネルギー(カロリー)
- 脂肪
- 飽和脂肪
- 炭水化物
- 糖類
- たんぱく質
- ナトリウム
2. 表示単位
【日本】
栄養成分表示は、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の順に記載することが一般的です。
【EU】
記載の順序は日本と同じですが、100gまたは100mlあたりの含有量を表示することが義務付けられています。
また、ビタミンやミネラルを表示する際は、推奨1日摂取量に対する割合(%)も記載する必要があります。
日本とEUの食品表示の姿勢の違い
日本とEUの食品表示は、それぞれ異なる考え方に基づいています。
【日本】
消費者がアレルギーや栄養成分を正しく理解し、自らの意思で食品を選べるようにすることが主な目的です。
【EU】
消費者の健康を守ることをより強く重視しています。そのため、より直感的に食品の健康情報を把握できるような仕組みが導入されています。
例えば、任意ではありますが「容器包装前面表示制度(栄養)」(FoPNL: Front-of-Pack Nutrition Labelling)と呼ばれる、食品パッケージの前面に栄養情報を分かりやすく表示する制度です。
例えば、フランスで策定され、EU域内で広く採用されている「Nutri-Score(ニュートリスコア)」は、食品の栄養価をAからEまでの5段階と色で評価するシステムです。これは、糖分、飽和脂肪、塩分、カロリーといったマイナス要素と、たんぱく質、食物繊維、果物、野菜といったプラス要素を総合的に評価することで、消費者が一目で商品の健康情報を把握し、健康的な食生活を送るためのサポートをすることを目的としています。消費者の健康的な食生活を積極的にサポートしようとするEUならではの取り組みと言えるでしょう。
今回、日本とEUにおける食品表示ラベルを簡単にまとめさせていただきましたが、食品表示における法律の変更は常に行われていますので、常に最新の情報をご確認下さい。
■ 出典元
・2025年6月26日EU 貿易管理制度:EU輸入管理その他 食品ラベル表示、添加物に関する規制
・EU容器包装前面表示制度(FoP)に関する調査